人目よくらむ

雑記です

「共同親権」を巡る議論が気になった

共同親権」を巡る議論が気になったのでメモと所感。

議論の発端はこの記事。
www.okinawatimes.co.jp


「7月17日の記者会見」のニュース記事は下記。
www.jiji.com



それに対する、武蔵大学千田先生の翌日の記事。news.yahoo.co.jp

記者会見の翌朝6時にこの熱量とボリュームの記事を上げられている千田先生には感服。とても丁寧に、欧米との比較をしたうえで、「丁寧に議論を」と呼び掛けている。それに比べると、木村先生の記事は意図的かどうかは分からないが、「推進派は不適切」と、バッサリ斬っている。

TBSラジオ 荻上チキSession22のヘビーリスナーの自分からすれば、木村先生の言説を擁護したいところではあるが、木村先生は共同親権の問題に対して、以前からかなりの強弁を振るっていて、少し危うさを感じる。

最も大きく反発しているのは、話し合い無しに子供を連れて妻に逃げられた「連れ去り」の被害者である男性諸氏であるようだ。中には、子供との面会・交流が一切立たれて自殺した例も少なくないとのこと(件数に関するソースは不明)。


 
このツイートが、8/20現在で約8500件RTされていた。
そのスレッドの中、同氏の下記の返信が本質のようにも思えた。

適切な調査がなされないことこそが問題なのだという主張はその通りだと思う。それは「連れ去り」案件に限ったことではなく、今の警察・検察の捜査、取り調べ、司法判断の歪さこそが問題だということに行き着くと思われる。


ツイッターでは「連れ去り」被害者を中心とする共同親権推進派と木村先生が議論を交わしている。どちらも「子供の権利を最優先すべき」という主張をしながら、目指そうとするゴールが全く異なっているところが非常に興味深い。木村先生は現行法の問題点を「改善」すべきであると考えていて、推進派は新しい法の下でそれを踏まえたいと考えているだけの違いのようにも、傍目には見える。


「推進派」と思われる土井浩之弁護士の反論記事があったので貼っておく。

doihouritu.blog.so-net.ne.jp


木村先生が「子供の利益」の議論を避けている、という主張があるが、自分はそうは思わない。記事の中でも「子の利益」という言葉を何度も書いているし、子の利益を優先して、現行の枠組みの中で出来ることがある、という主張に見える。

(どうでもいいが、「保守派」と呼ばれるような方々が大規模な改革を目指していて、リベラル寄りと思われる木村先生が現行法の保守を訴えているという構図も面白い。)

データを当たってないので単なる憶測であるが、夫のモラハラ/DVからの母子逃亡の例が圧倒的に多いのであろう(自分の身近にもいる)。それを踏まえて合理的な判断をすると、いったん母側の主張を丸飲みするのが確率的に効率が良いのだろうと思われる。だからと言って「連れ去り」被害者を無視していいことにはならない。

この構図は、痴漢冤罪ともよく似ている。圧倒的に被害者(主に女性)が多いにもかかわらず、件数の少ない「痴漢冤罪」を根拠に痴漢犯罪を被害者の責任にしようとするなど、明らかな論点ずらしが始まったりする。

「連れ去り被害者」の周辺には、女性の言い分を丸飲みにする警察・検察がいて、「痴漢/強姦被害者」の周辺には女性の言い分を全く信用しない警察・検察がいるという対比も非常に興味深い。連れ去りにしても痴漢冤罪にしても、結局は捜査・取り調べ・司法制度の問題点に行き着くことを考えると、まず改善すべきはそこなのではないかと思うのだが。


最後に、木村先生が一つの「答え」のようなツイートをしていたので貼り付けておく。「子供の利益を最大化するための子供の代理人を立てる。」
これに尽きると思う。(が、実際にはいろんな方面のバイアスがかかって難しいんだろうなあ…)